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動的前歯誘導設計における
顎運動計測システムの活用

4D仮想患者技術の展開

主要論文

"Dynamic modelling of the anterior guidance slope using a jaw tracking system in a fully digital CAD-CAM workflow"

Ken Haku-Mizuhara et al. (2025) Journal of Prosthetic Dentistry
"Development of a 4-dimensional virtual patient in motion: A digital concept"

2025年 学術発表

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研究背景

従来の静的咬合設計の限界

  • • 平均値設定による個別性の欠如
  • • 動的機能の考慮不足
  • • 咬合調整の必要性
  • • 予測性の低い補綴装置

デジタルワークフローの進歩

  • • 口腔内スキャナー (IOS) の普及
  • • CAD/CAM技術の高度化
  • • 3D画像診断の標準化
  • • AI統合システムの登場

4D仮想患者概念の登場

Ken Haku-Mizuhara et al. (2025)による革新的アプローチ

  • • IOS + EOS + CBCT + JMT統合
  • • リアルタイム動的診断
  • • 個別化治療計画
  • • 予測可能な治療結果
4D Virtual Patient Integration

4D仮想患者における統合ワークフロー (JPD, 2024)

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主要論文の概要

Dynamic Modelling of Anterior Guidance Slope

顎運動計測装置(JTS)を用いて患者固有の下顎運動をデジタルに記録し、上顎中切歯のパラタル形態を仮想設計する革新的手法

使用機器・システム

iTero 口腔内スキャナー

高精度デジタル印象採得

Zebris WinJaw+

顎運動計測システム

exocad CADソフトウェア

統合設計プラットフォーム

技術的革新

  • • 患者固有の下顎運動データ活用
  • • プロトルーシブ運動に基づく形態設計
  • • ジルコニアクラウンの精密加工
  • • 咬合調整不要の実現
Jaw Tracking System

顎運動計測システムの概要

CAD-CAM Workflow

デジタルCAD-CAMワークフロー (PeerJ, 2024)

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4D仮想患者技術

Ken Haku-Mizuhara et al. (2025) Journal of Prosthetic Dentistry

4次元仮想患者の概念

IOS、EOS、CBCT、JMTデータの統合により、時間軸を含む4次元の患者情報を構築し、動的診断と治療計画を可能にする革新的技術

データ統合技術

IOS (Intraoral Scanner)

STLフォーマットによる口腔内3Dデータ

EOS (Extraoral Scanner)

顔面スキャニングデータ

CBCT (Cone Beam CT)

DICOMフォーマット骨格構造データ

JMT (Jaw Motion Tracking)

リアルタイム顎運動データ

Digital Workflow Integration

フルデジタルワークフローによる顎位登録 (JERD, 2023)

臨床的利点

  • • デジタル診断の高精度化
  • • 治療計画シミュレーション
  • • 患者期待値管理
  • • 効果的コミュニケーションツール
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研究方法論

Zebris WinJaw+による顎運動記録

計測システムの特徴

  • • 超音波センサーによる非接触計測
  • • 3次元顎運動の高精度記録
  • • リアルタイムデータ取得
  • • exocadとの直接連携

設計プロセス

Step 1: プロトルーシブ運動記録
Step 2: バーチャルワックスアップ
Step 3: 軌跡シミュレーション
Step 4: ジルコニア切削加工
Zebris Measurement Function

Zebris顎運動計測システムの機能

JMA Optic System

JMA Optic 顎運動解析システム

研究成果

咬合調整を行うことなく、滑らかな機能運動が得られ、臨床的にも再現性のある補綴装置の製作が実現

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臨床的意義

個別化された動態データの活用

従来の平均値設定ではなく、患者固有の動態データに基づく咬合設計により、より正確な前歯誘導の再現が可能

  • • 個人差を考慮した設計
  • • 機能的調和の実現
  • • 生理的な咬合関係

デジタルワークフローの完全統合

IOS・JTS・CAD/CAMの完全統合により、アナログ工程を排除し、作業効率・精度の向上を実現

  • • シームレスなデータ転送
  • • 誤差の最小化
  • • 時間効率の改善

咬合調整ゼロの実現

バーチャルワックスアップと軌跡シミュレーションによって、調整を必要としないクラウンを再現

  • • 即座の装着可能
  • • 患者負担の軽減
  • • 予測可能な結果
Anterior Guidance

前歯誘導の概念図

機能的パラメータの可視化

「generate virtual imprint」機能により、接触点の動的変化が視覚的に確認可能

  • • リアルタイム接触解析
  • • 動的咬合の評価
  • • 設計検証の高度化

診断から補綴までの一貫性

記録→設計→製作→装着までが一貫しており、診療工程の予測性が高い

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技術的革新点

Generate Virtual Imprint機能

革新的可視化技術

顎運動データから仮想的な接触痕跡を生成し、動的咬合関係を3次元で可視化

  • • 接触点の動的変化表示
  • • 滑走路の最適化
  • • 干渉部位の特定
  • • 設計精度の向上

軌跡シミュレーション

動的運動解析

患者固有の顎運動パターンに基づく精密な軌跡予測

  • • プロトルーシブ運動軌跡
  • • 側方運動パターン
  • • 開閉口軌跡解析
  • • 咬合接触シーケンス
Optical Jaw Tracking System

光学式顎運動追跡システムの活用 (JPD, 2024)

バーチャルワックスアップ

デジタル形態設計

従来の手作業ワックスアップをデジタル化し、精密な形態設計を実現

  • • パラメトリック設計
  • • 即座の修正・調整
  • • 設計履歴の保存
  • • 標準化された品質

統合プラットフォームの実現

データ取得

IOS + JTS統合

設計・解析

AI支援CAD

製作・装着

精密CAM加工

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改善すべき点

症例数の不足

1症例のテクニカルレポートにとどまり、臨床的汎用性や再現性を示すには不十分

  • • 統計的有意性の欠如
  • • 多様な臨床状況への適用性不明
  • • 術者による差異の未評価

長期的な経過観察がない

6週間後の経過のみであり、長期の安定性・摩耗・補綴物の変形については未評価

  • • 材料劣化の長期評価なし
  • • 咬合変化への対応不明
  • • メンテナンス方法の未確立

補綴物の種類が限定的

単冠に限られており、複数歯補綴や咬合再構築への応用は未検討

  • • ブリッジへの適用性不明
  • • フルマウス再構築への展開なし
  • • インプラント上部構造での検証なし

JTS計測の精度に依存

WinJaw+の記録精度に依存しており、システムエラーや患者の運動再現性による誤差の可能性

  • • 機器キャリブレーションの重要性
  • • 患者協力度への依存
  • • 環境要因による影響

動的咬合の定義が曖昧

「前歯誘導の動的設計」としているが、咀嚼・側方運動に関する記述が乏しい

  • • 機能運動の評価不足
  • • 咀嚼効率への影響未評価
  • • 側方運動での検証不十分

費用対効果の評価不足

高額な機器導入コストに対する臨床的メリットの定量的評価が不十分

  • • 投資回収期間の未算定
  • • 従来法との比較コスト分析なし
  • • 患者満足度の定量評価不足

改善提案

これらの限界を克服するため、多施設・多症例による前向き研究、長期フォローアップ体制の構築、費用対効果分析の実施が急務である。

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今後の展望

多症例の臨床研究

前歯・小臼歯・大臼歯を含めた複数症例での臨床的有効性の検証

  • • 多施設共同研究の実施
  • • 年齢・性別による層別解析
  • • 歯種別成功率の比較
  • • 統計的有意性の確立

複数ユニット・咬合再構成への展開

咬合再構築、フルマウスリコンストラクションなどへの応用

  • • ブリッジ設計への統合
  • • 全顎補綴への適用
  • • インプラント治療との連携
  • • 複雑症例への対応

他のJTSとの比較検討

Zebris以外との精度・操作性・臨床成績の比較

  • • Modjaw, ARCUS digmaとの比較
  • • 精度評価の標準化
  • • コストパフォーマンス分析
  • • 最適システムの選択指針
Modjaw All-in-One Solution

Modjaw統合ソリューション

AIとの統合による自動設計化

得られた顎運動データと形態設計をAIで学習・自動化するシステム構築

  • • 機械学習アルゴリズムの開発
  • • 設計パターンの自動認識
  • • 予測精度の向上
  • • 設計時間の大幅短縮

力学的解析との統合(FEM等)

設計された前歯誘導形態が関節や周囲歯列に与える影響を有限要素解析で評価

  • • 応力分布の可視化
  • • 疲労寿命の予測
  • • 材料選択の最適化
  • • 設計パラメータの最適化

革新的技術統合の展望

AI診断支援

自動診断・治療計画

VR/AR応用

没入型治療シミュレーション

IoT統合

リアルタイム健康モニタリング

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推奨される研究テーマ

「動的設計 vs 静的設計」比較研究

前歯誘導における従来の静的設計と新しい動的設計の臨床成績比較

  • • ランダム化比較試験の実施
  • • 咬合調整回数の比較
  • • 患者満足度の定量評価
  • • 長期安定性の追跡調査

JTSの再現性と臨床的影響評価

異なる顎運動計測システムの測定精度と臨床応用への影響

  • • 測定者間・測定内信頼性
  • • システム間精度比較
  • • 環境因子の影響評価
  • • 標準化プロトコルの確立

デジタル誘導設計による筋活動(EMG)変化

前歯誘導設計が咀嚼筋活動パターンに与える影響の詳細解析

  • • 表面筋電図による評価
  • • 筋活動効率の比較
  • • 疲労度の客観的評価
  • • 神経筋機能の最適化

バーチャルアーティキュレーター設定の個別化効果

患者固有のパラメータ設定による設計精度向上の検証

  • • 個別化パラメータの最適化
  • • 平均値設定との比較
  • • 設計効率の改善
  • • 臨床成績への寄与

咬合干渉ゼロ補綴の長期臨床研究

デジタル設計による理想的咬合の長期安定性評価

  • • 5-10年長期フォローアップ
  • • 摩耗パターンの解析
  • • 咬合変化の追跡
  • • 生物学的合併症の評価
Digital Workflow for Mandibular Range of Motion

下顎運動範囲測定のためのデジタルワークフロー (JPD, 2024)

統合的研究アプローチの提案

短期目標(1-2年)

  • • 多症例症例対照研究
  • • システム間精度比較
  • • 費用対効果分析

長期目標(3-5年)

  • • AI統合システム開発
  • • 長期臨床成績評価
  • • 国際標準化への貢献
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参考文献

主要論文

Ken Haku-Mizuhara, Gen Tanabe, Arvin Kadempour, et al.

"Development of a 4-dimensional virtual patient in motion: A digital concept"

Journal of Prosthetic Dentistry, 2025 (Published online: March 31, 2025)

DOI: S0022-3913(25)00212-4

原著論文

"Dynamic modelling of the anterior guidance slope using a jaw tracking system in a fully digital CAD-CAM workflow"

デジタル歯科学会誌(仮)

関連研究

Lepidi, L., Kim, B.C., Giberti, L., et al.

"The 4D virtual patient: A proof of concept in digital dentistry"

Journal of Prosthetic Dentistry, 2024

Zambrana, N., Sesma, N., Fomenko, I., et al.

"Jaw tracking integration to the virtual patient: A 4D dynamic approach"

Journal of Prosthetic Dentistry, 2024; 131:370-374

Y Feng, L Zhan, X Sun, J Li, et al.

"A fully digital workflow to register maxillomandibular relation using a jaw motion tracer for fixed prosthetic rehabilitation: A technical report"

Journal of Esthetic and Restorative Dentistry, 2023

技術文献

JE Kim, JH Park, HS Moon, JS Shim

"Complete assessment of occlusal dynamics and establishment of a digital workflow by using target tracking with a three-dimensional facial scanner"

Journal of Prosthodontic Research, 2019; 63(1):120

Revilla-León, M., Zeitler, J.M., Fry, E., et al.

"Digital workflow to measure the mandibular range of motion using different jaw tracking technologies"

Journal of Prosthetic Dentistry, 2024

システム・機器

使用機器

  • • iTero Element 5D 口腔内スキャナー (Align Technology)
  • • Zebris WinJaw+ 顎運動計測システム (zebris Medical GmbH)
  • • exocad DentalCAD ソフトウェア (exocad GmbH)
  • • Planmeca CBCT システム (Planmeca Oy)

Web資料

zebris Medical GmbH 公式サイト

https://www.zebris.de

Digital Dentistry Schoology - JMA Optic

JMA Optic記事

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結論とまとめ

技術的成果と臨床的意義

  • 顎運動計測システム(JTS)とCAD-CAMの完全統合により、患者固有の動的前歯誘導設計が実現
  • 咬合調整ゼロを達成し、予測可能な補綴治療の新基準を確立
  • Ken Haku-Mizuhara et al.の4D仮想患者技術と連携し、包括的デジタル診療を実現

今後の研究方向性

  • • 多施設・多症例による臨床的有効性の検証
  • • AI統合による自動設計システムの開発
  • • 長期安定性と生物学的安全性の評価
  • • 費用対効果分析と保険適用への道筋
  • • 国際標準化への貢献

臨床応用への道筋

短期目標(1-2年)

  • • システムの標準化と教育プログラム確立
  • • 多症例データベースの構築
  • • 機器精度の向上と低コスト化

中期目標(3-5年)

  • • AI支援診断システムの実用化
  • • 全顎補綴への応用拡大
  • • 国際ガイドライン策定への参加

長期目標(5-10年)

  • • パーソナライズド歯科医療の確立
  • • 予防歯科への統合
  • • グローバルスタンダードの確立

Future of Digital Dentistry

顎運動計測システムと4D仮想患者技術の融合により、
歯科医療は新たな次元へと進化していく

AI統合

4D技術

個別化医療

ご清聴ありがとうございました

質疑応答・ディスカッション